わたしはあの時、いったい何を失ったのだろう-。
ベルギーの小さな地方都市。老年に差し掛かったアンナ(シャーロット・ランプリング)と夫(アンドレ・ウィルム)は、慎ましやかな暮らしをしていた。会話こそないが、そこには数十年の時間が培った信頼があるはずだった。しかし、次の日夫は、ある疑惑により警察に出頭し、そのまま収監される。アンナの生活はわずかに歯車が狂い始め、やがてそれは見て見ぬふりが出来ないほどに、大きな狂いを生じていくのだった・・・。人生の終盤、さまざまな業を背負ったひとりの女が、もう一度“生きなおし”を図るまでの、哀しみと決意を追う人生最後のドラマが、ミステリー小説のごとく描かれていく-。