今日子と修一の場合


企画・監督・脚本:奥田瑛二ー
出演:安藤サクラ・柄本 佑 ほか

2013年/日本/135分/カラー/ビスタサイズ
製作:ゼロ・ピクチュアズ
配給:彩プロ
宣伝:ミモザフィルムズ、オムロ、アルゴ・ピクチャーズ
協賛:㈱浅間製作所、アイテム25周年記念プロジェクト 
©ZERO PICTURES

この物語は、被災地を故郷に持った、女と男の物語。

『長い散歩』でモントリオール世界映画祭グランプリを受賞するなど、映画監督としても世界的な評価を受ける名優・奥田瑛二。前作『風の外側』から6年ぶり、5作目の長編となる本作は、東日本大震災を背景に、心の拠りどころを失くした2人の若い男女を通じ、まだ癒えることのない日本の傷跡を生々しくさらすと同時に、過去の重い罪を背負いながら、ふたたび人生を生きようとする姿を力強く謳ったヒューマン・ドラマを作り上げた。この作品は、自らオリジナル脚本を執筆した奥田監督でなければ決して生まれないであろう独創的で、今の閉塞した日本を打ち破るような野心作である。同居中の男に言われるがままの生活を送る、今日子には昨年、「かぞくのくに」「愛と誠」「その夜の侍」で「第37回報知映画賞助演女優賞」「キネマ旬報ベストテン主演・助演女優賞」をはじめ、各賞を総なめした女優の安藤サクラ。一方、小さな町工場で働き始める修一には多くの映画やTVドラマ、舞台と活躍を広げる柄本佑。次世代の日本映画界を支える若手実力派として、各映画賞を独占するだけでなく、実生活では夫婦である2人が本作で共演し、劇中ではほとんど交わることのない他人を演じることで、より観客の胸に訴えかける作品に仕上がっている。また、『プラチナデータ』の和田聰宏、『BECK』のカンニング竹山、『かぞくのくに』の宮崎美子、『八日目の蝉』の平田満などの実力派キャストが、奥田監督の熱いラブコールに応えて顔を揃えた。また、作家の高橋源一郎が監督の期待に応える個性的な演技を見せ、『ふがいない僕は空を見た』『ももいろそらを』などで注目される若手女優・小篠恵奈が、修一を陰で支えていく少女を好演している。

今日子の場合

ある日、夫が病に倒れ、生命保険会社の外交員の仕事に就いた今日子だったが、上司(カンニング竹山)から営業成績の不振を指摘される。やむなく上司や営業先の社長などに体を許すことを選ぶ彼女だったが、それが家族の知るところとなり、家を追われるだけでなく、一人息子の親権も奪われてしまう。あてもなく渋谷の街中を歩く孤独な彼女の前に、一人の男(和田聰宏)が現れた。彼は今日子の心の隙間に寄生し、次第に寄り添い始める。同棲を始め、体を売る仕事に就くなど、身も心も搾り取られた日々を送る彼女にも、“ あの瞬間”が訪れる。

修一の場合

大学進学のため、浪人生活を送っていた南三陸町出身の修一。受験を控えるなか、暴力的な父から母を守るために事件を起こし、少年刑務所に服役することになった修一。そして、修一は出所後、東京の小さな町工場に住み込みで勤務。新たな生活を始めようとしていた彼にも、“あの瞬間”が訪れる。また、彼と同じく、悲しく辛い過去を持つピアニスト志望の友人(和音匠)や、彼を支えようとする少女(小篠恵奈)とも出会う。そして、ふたたび大学受験を決意した修一は、未来に向かって歩み始めるのであった。