世界が恐れた、新しい「家族のルール」
第62回カンヌ国際映画祭で審査員を驚かせた、家族の絆を誰にも壊されたくないと願う父親の妄執、そしてそれに振り回されて育った子どもたちの生活を描いた本作は、どこか奇妙な、どこかユーモアのある、そしてどこかにこんな家族がいるのではないかと恐ろしい気持ちにもさせる。「どの家族にも、それぞれのルールがある」というランティモス監督のメッセージは、「あまりにも極端な状況」がクライマックスに向かうまでの緊張とともに、観る者の心を揺さぶるだろう。
ギリシャの郊外にある裕福な家庭。だが、一見普通にみえるこの家には秘密があった。両親が子どもたちを外の世界の汚らわしい影響から守るために、ずっと家の中だけで育ててきたのだ。邸宅の四方に高い生垣をめぐらせ、子どもに「外の世界は恐ろしいところ」と信じ込ませるために作られた「厳格で奇妙な」ルールの数々。学校にも通わせないその様子は外の世界からすれば異常なことだったが、純粋培養された従順な子どもたちはすくすくと成長し、幸せで平穏な日々が続いていくかのように見えた。しかし、成長とともに好奇心の芽生えた子どもたちは恐怖を抱えつつも、次第に外の世界に惹かれていくのだった…。